矯正歯科治療
歯科矯正治療とは、一般的には歯並びをきれいに治す治療のことをいいます。
美容的な改善だけでなく、数多くの治療効果をもちあわせる歯科治療の一分野です。
ここでは、歯科矯正治療の治療法について、その種類や値段の違いから、痛みの度合い、対応する症例や治療範囲について比較しながら紹介します。
歯並びを治したいと思っている人や、歯科矯正治療について不安や疑問のある人は、ぜひ参考にしていただき、満足のいく矯正歯科医院選びや、矯正治療につなげてください。
矯正歯科治療とは
矯正歯科治療は、歯並びを整える治療をメインに行っている診療科です。
矯正歯科治療で提供する治療は、マルチブラケットを用いたワイヤー矯正やマウスピース型矯正など、使用する矯正装置や矯正法はさまざまですが、目的は歯並びを改善することにあります。
矯正治療の妨げとなるような虫歯や軽度の歯周病なども、矯正歯科治療で治せますが、基本的には歯並びを改善するための診療科です。
矯正歯科治療ってなに?
矯正歯科治療とは悪い歯並びや噛み合わせを、きちんと噛み合うようにして、きれいな歯並びにする歯科治療です。
矯正装置を通じて、歯や顎の骨に力をかけてゆっくりと動かして、歯並びと噛み合わせを治していきます。
矯正にかかる期間
治療期間は通常の装置を入れておく期間が1~2年程度かかり、簡単な治療で改善する場合には半年程度で済むこともあります。
矯正治療の費用
特殊な病気による不正咬合の矯正歯科治療を除いて、矯正歯科治療は健康保険が適用できません。従って、治療費全額が自己負担となります。
通常、歯の表側からつける複雑なマルチブラケット装置などの精密な装置を使用する場合、初診から矯正歯科治療後の保定期間の通院までも含めた一般的な総額で80~120万円程度です。
難しい症例あるいは長期間の治療を要する症例では、さらに費用がかさむ場合もあります。費用は、地域や医院によって異なります。
矯正中の痛み
矯正治療には必ず痛みが伴います。痛みの大小は矯正治療の方法や症例によって異なり、痛みの感じ方も個人差がありますが、大なり小なり必ず痛みは伴います。
基本的には、耐えられないほどの痛みを伴うことは、現代の矯正治療ではほとんどありません。
矯正治療に痛みが伴う理由は、大きく「歯が動くことが原因で生じる痛み」と「矯正装置が口の中に当たることが原因で生じる痛み」の2つです。
それぞれ原因が異なるために、痛みを減らす対処法も異なります。
痛みが強い場合は鎮痛薬を使用して一時的に痛みを減らすこともできます。痛みの根本原因となる問題を知っておき、なるべく痛みの少ない方法を検討することで、矯正治療の期間をストレスなく過ごすことができるはずです。
矯正歯科治療と一般歯科の違い
多くの歯科医院の看板には、矯正歯科治療、一般歯科、口腔外科、小児歯科など複数の標記がされているのを見ます。
矯正歯科治療は歯科のなかでは特に専門性が必要とされる診療科です。
虫歯や歯周病、入れ歯治療など、保険が適用される治療の多くは一般歯科で受けられます。
歯のトラブルが発生した場合は、まず一般歯科に足を運ぶのが一般的です。
幅広い口内のトラブルに対応できるため、上記の治療以外に歯列の矯正サービスも受けることが可能です。
一般歯科の場合、歯列矯正をする前に口内の健康状態をチェックしてもらい、必要に応じて治療を受けられる点がメリットといえます。
一方の矯正歯科とは、歯の治療のなかでも歯列矯正に特化した歯科医院のことです。
一般歯科では用意されていない歯列矯正専用の治療設備も整っているほか、さまざまな症例に対する歯列矯正のノウハウもあります。そのため、一般歯科で矯正ができないと判断された症例でも、矯正歯科であれば適切な対処をした上で治療してもらえる可能性が高いです。
悪い歯並びを放置しておくリスク
歯並びの悪さは、見た目だけでなく口腔の健康や機能にも影響を与えることがあります。
早期に歯並びの問題を認識し、適切な治療を受けることでこれらのリスクを軽減できるでしょう。
不正咬合によるリスク
歯並びや噛み合わせに異常がある状態を「不正咬合(ふせいこうごう)」と呼びます。不正咬合には種類があり、それぞれが異なるリスクを伴います。主に発生するリスクは以下のとおりです。
- 充分に咀嚼ができない
- 歯槽膿漏のリスクが高まる
- 口臭の原因になる
- 顎の関節に負担がかかる
充分に咀嚼ができない
噛み合わせが悪いと、「前歯で噛み切れない」「しっかり噛めない」といった咀嚼への影響が懸念されます。
また、うまく噛めないことが、胃腸への負担や偏食、食事へのストレスなどにつながる場合もあります。子どもの場合は、食事による成長・発育への影響も、注意が必要です。
歯槽膿漏のリスクが高まる
歯並びが悪いと歯磨きがしにくく、口の中が不衛生になりやすいため、虫歯や歯周病、歯槽膿漏など口内の病気にかかりやすくなります。
噛み合わせが悪いと食物が歯間に残りやすくなり、虫歯や歯周病の原因となるバクテリアの繁殖を助けることになります。
口臭の原因になる
正しい噛み合わせは唾液の分泌を促進し、口腔内を潤す役割を果たします。
唾液は口腔内のバクテリアを洗い流し、口の中を清潔に保つ重要な役割がありますが、噛み合わせが悪いと、唾液の分泌量が減少します。その結果、口腔内が乾燥し、口臭の原因となるバクテリアが増えやすくなるのです。
顎の関節に負担がかかる
噛み合わせが悪いと顎関節に負荷がかかり、顎の関節や咬筋(顎を動かす筋肉)の緊張を引き起こし、頭痛や肩こりを誘発することがあります。
例えば、顎を正しく動かせない場合、矯正のために顎周囲の筋肉が過度に緊張します。長時間続くと血行が悪くなり、結果として頭痛や肩こりを引き起こすことがあります。
噛み合わせの悪さは体全体の健康に影響を及ぼし、頭痛や肩こりなどの症状を引き起こす可能性があります。
「不正咬合」の症例
歯並び(不正咬合)の種類と症状について解説します。不正咬合には以下のような種類があります。
1つずつくわしく見ていきましょう。
出っ歯(上顎前突) | 前歯が前に出ている上顎前突(じょうがくぜんとつ)は、上下顎の発育バランスや遺伝が原因で起こります。前歯で噛めない・口が閉じにくいなどの症状があります。 |
---|---|
受け口(下顎前突・反対咬合) | 下の歯が前に出ている下顎前突(かがくぜんとつ)は、受け口や反対咬合とも呼ばれます。下の歯が前に傾斜していたり、下顎自体が前に出ていたりする状態です。 |
叢生(そうせい)・乱ぐい歯 | 歯がデコボコに生えている叢生(そうせい)は、乱ぐい歯とも呼ばれ、不正咬合の中で最も多い症状です。主に顎が小さいことが原因で、歯がねじれたり、重なったりして生えてきてしまいます。 |
開咬 | 前歯がうまく噛み合わない開咬(かいこう)は、奥歯を噛み合わせたときに、前歯が噛み合わない状態です。うまく噛めない・口が閉じにくいといった症状があります。 |
手術が必要になるケース
顎変形症など矯正治療のみでは安定した噛み合わせにすることは非常に困難で、また顎の曲がりを改善するために、顎の骨に対する外科手術を併用することがあります。
顎変形症
上顎や下顎の骨に変形がある場合、歯並びを矯正しただけでは充分な結果が得られないことがあります。
そこで外科的に矯正する顎矯正手術(外科的矯正治療)を併用し、適切な噛み合わせに治療することになります。
顎変形症の治療は、口腔外科または形成外科と一緒に治療方針を検討した上で、連携をとりながら進める必要がある治療です。
食べ物が噛み切れない、歯並びの真ん中がずれている、噛み合わせが反対、下顎が出て、曲がっているなどの複雑な顎変形症では、手術が必要です。
なお、軽度の顎変形症は矯正治療のみで対処可能なケースもあるため、医師としっかり相談しましょう。
矯正治療治療の種類
歯科矯正にはワイヤー矯正や裏側矯正、マウスピース型矯正など、さまざまな矯正方法があります。
矯正治療を検討している方が自分に合った矯正方法を知るには、それぞれの特徴や違いを理解することが大切です。
矯正の種類 | 治療方法・特徴 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
ワイヤー矯正 | 歯の表面に金属の矯正器具を取り付ける。 適応範囲が広く、歯を大きく動かす必要がある場合に適している。 |
適応範囲が広い 取り外しが必要ない 歯磨きがしやすい 発音に大きな問題がない 裏側矯正よりも治療期間が短い 裏側矯正よりも値段が安い |
矯正器具が目立つ 矯正器具に食べ物が引っかかる 食べ物が制限される 強い痛みが起こることがある 矯正器具で口腔内を傷つける |
マウスピース型矯正 | 透明なマウスピース型の矯正器具を使って歯を動かす。 矯正中であることを目立たせたくない方におすすめ。 矯正器具を取り外せる点、矯正器具が目立たないので人気。 |
矯正器具が目立たない 食事の制限がない 歯を磨きやすい 痛みが生じづらい 金属アレルギーの方も利用可 |
歯並びの状態によっては使えない 装着時間を守らなければならない マウスピースのつけ外しや洗浄などの自己管理が必要 |
インプラント矯正 | 大がかりな手術が不要 治療期間の短縮ができる 抜歯をせずに矯正治療を受けられる幅が広がる インプラント自体は目立たない |
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外科矯正 | ワイヤー矯正やマウスピース型矯正に加えて、手術で顎の骨を動かして、歯並びを改善する矯正方法 | ||
コンビネーション矯正 | 治療の前半は裏側矯正、治療の後半はマウスピース型矯正をおこなう矯正方法 治療による負担を軽減できる |
ワイヤー矯正
ワイヤー矯正は、歯の表面に金属の矯正器具を取りつける矯正方法です。
ブラケットと呼ばれる矯正器具を歯の表面に取りつけ、ブラケットにワイヤーを通し、動かしたい方向に力をかけて歯を動かします。
歯の表面に矯正器具を取り付ける表側矯正と、舌側に取り付ける裏側矯正があります。
ワイヤー矯正に共通するメリットには、以下のようなものがあります。
メリット
- 適応範囲が広い
- 取り外しが必要ない
- 歯磨きがしやすい
- 発音に大きな問題がない
一方、以下のようなデメリットがある点には注意しましょう。
デメリット
- 矯正器具が目立つ
- 矯正器具に食べ物が引っかかる
- 硬いものやねばり気のあるものなどの食べ物が制限される
- 矯正器具の取りつけによって強い痛みが起こることがある
- 矯正器具によって口腔内を傷つけることがある
ワイヤー矯正は歯の表面に矯正器具を取りつける場合、矯正器具が目立ちやすい点がデメリットです。
しかし、ワイヤー矯正で使われる矯正器具は金属のメタルブラケットだけではなく、プラスチックやセラミックなどで作られた「審美ブラケット」もあります。
審美ブラケットはメタルブラケットに比べて値段が高く、素材によっては強度が落ちる点には注意が必要です。
マウスピース型矯正
透明なマウスピース型の矯正器具を使って歯を動かします。
マウスピース型矯正は、矯正中であることを気付かれたくない、目立たせたくない方におすすめです。
マウスピース型矯正には、以下のようなメリットがあります。
メリット
- 矯正器具が目立たない
- 食事の制限がない
- 歯を磨きやすい
- ワイヤー矯正よりも痛みが生じづらい
- 金属アレルギーの方も利用できる
マウスピース型矯正のメリットとしては、矯正器具を取り外せる点、矯正器具が目立たない点が大きな特徴です。
矯正器具を取り外せるので、食事の制限や歯の磨きづらさがなく、矯正中も快適に過ごせます。
また、マウスピース型矯正は金属の矯正器具を使わないため、金属アレルギーの方でも治療を受けられることも特徴の1つです。
ただし、マウスピース型矯正には、以下のようなデメリットがあります
デメリット
- 歯並びの状態によっては使えない
- 装着時間を守らなければならない
- マウスピースのつけ外しや洗浄などの自己管理が必要
歯並びの状態によってはマウスピース型矯正ができないことがあります。
また、自由に取り外せるようにはなっていますが、矯正効果を得るには1日20時間以上の装着が必要です。
そのため、マウスピースをつけるのを忘れてしまうと、治療の効果が得られなくなってしまいます。
インプラント矯正
インプラント矯正は、歯科矯正用のアンカースクリュー(小さなねじ)を用いた矯正方法です。
顎の骨に埋めたアンカースクリューを軸として歯を動かします。
ワイヤー矯正よりも大きな力を加えやすいため、短期間で歯を動かすことができ、ほかの矯正方法では充分な効果が得られないような方にもおすすめです。
矯正用インプラントのメリットは、以下のとおりです。
メリット
- 大がかりな手術が不要
出っ歯・開咬・ガミースマイルの矯正など、強い力をかける必要があるとき、インプラントを使うことで効率的に歯を動かせます。 - 治療期間の短縮 ”スピード矯正”
効果的に力をかけられるのでスムーズに治療を進めることができます。 - 抜歯をせずに矯正治療を受けられる幅が広がる
奥歯をより後ろに動かすことができるので、抜歯を回避する可能性が広がります。 - インプラント自体は目立たない
矯正用インプラントは小さく、口腔内にあるのでほとんど目立ちません。
一方、矯正用インプラントには次のようなデメリットがあります。
デメリット
- 顎の成長が終わってからしか行えない(高校生以降)
顎の骨が成長している間は骨に悪影響を及ぼす可能性があるので、顎の成長終了後の適応となります。 - 局所麻酔が必要
矯正用インプラントを埋め込む際に局所麻酔をする必要があります。 - 力のコントロールが重要
歯を動かす際、いくらでも力をかけて良いわけではありません。矯正力が強すぎると歯根吸収などを引き起こすリスクが高まります。適切な力がかかるようにコントロールが重要となります。
外科矯正
外科矯正は外科手術により顎の骨を動かして、歯並びを改善する矯正方法です。
主に下顎が小さすぎたり、顎が曲がっていたりと、骨格的な要因により歯並びが悪くなっている場合に用いられます。
コンビネーション矯正
コンビネーション矯正は、治療の前半は裏側矯正、治療の後半はマウスピース型矯正をおこなう矯正方法です。
はじめに裏側矯正で歯を大きく動かし、その後マウスピース型矯正で微調整をしていきます。
裏側矯正の違和感を短い期間で抑え、違和感の少ないマウスピース型矯正に移行するため、治療による負担を軽減できる点が特徴です。
ワイヤー矯正の種類
ここまで各矯正方法のメリットとデメリットを紹介してきました。
中でも矯正効果の高いワイヤー矯正は症状や目的にあわせて、いくつかの種類に枝分かれしています。ここからはワイヤー矯正の種類について深堀りしていきます。
ワイヤー矯正の種類と矯正方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
表側矯正 ワイヤーとブラケットを歯の表側に装着 |
比較的値段が安い 滑舌への影響が少ない ブラッシングが行き届きやすい適応範囲が最も広い |
矯正装置が目立つ 口が閉じにくい 引っかかった食べかすが目立つ 口内炎ができる |
裏側矯正 ワイヤーとブラケットを歯の裏側に装着 |
周りに気づかれにくい 虫歯トラブルになりにくい 後戻りのリスクを減らせる 口腔内を傷つけづらい 前歯を後方へ動かしやすい |
矯正器具の違和感を感じやすい 発音がしづらい 歯磨きが難しい 食事がしづらい 治療期間が長くなりやすい 値段が高くなりやすい |
ハーフリンガル矯正 上の歯では裏側に矯正器具を装着し、下の歯では矯正器具を表側に装着 |
表側矯正より目立ちにくい かかる費用を抑えられる 口の中の痛みや違和感が少ない |
歯の見え方によっては不向き 歯が磨きにくい 装着直後は痛みや違和感がある 噛み合わせの状態によっては装置がつけられない |
表側矯正
表側矯正とは、ワイヤーとブラケットを歯の表側に装着して矯正をおこなう治療方法です。
表側矯正のメリットは以下のとおりです。
メリット
- 比較的値段が安い
- 滑舌への影響が少ない
- ブラッシングが行き届きやすい
- 適応範囲が最も広い
表面矯正のデメリットは以下のとおりです。
デメリット
- 矯正装置が目立つ
- 口が閉じにくい
- 引っかかった食べかすが目立つ
- 口内炎ができる
裏側矯正
裏側矯正とは、ワイヤーとブラケットを歯の裏側に装着して矯正を行う治療方法です。
器具自体は表側矯正と同じく、ブラケットとワイヤーを使用します。
歯の裏側にブラケットを装着し、ブラケットにワイヤーを通すことで、力を加えて歯を動かす仕組みです。裏側矯正は舌側に矯正器具を装着するため、舌側矯正とも呼ばれています。
裏側矯正には、以下のようなメリットがあります。
歯の裏側に矯正器具を装着するため、矯正器具が目立たないところが大きなメリットです。
メリット
- 周りに気づかれずに歯列矯正ができる
- 矯正治療中の虫歯トラブルになりにくい
- 後戻りのリスクを減らせる
- 口腔内を傷つけづらい
- 前歯を後方へ動かしやすい
裏側矯正は、とにかく矯正器具を目立たせたくない方におすすめの矯正方法です。
また、歯の裏側に器具を装着するため、歯の裏側に舌を押し当てる癖を抑える効果が期待できます。
しかし、裏側矯正には以下のようなデメリットもあります。
デメリット
- 矯正器具の違和感を感じやすい
- 発音がしづらい
- 歯磨きが難しい
- 食事がしづらい
- 治療期間が長くなりやすい
- 値段が高くなりやすい
裏側矯正では歯の裏側に矯正器具を装着するため、違和感が生じますが、1〜2週間で違和感は薄れていくでしょう。
裏側矯正は高度な技術が必要とされる矯正方法です。
そのため、表側矯正に比べて費用が高くなりやすいというデメリットもあります。
ハーフリンガル矯正
ハーフリンガル矯正は、上の歯では裏側に矯正器具を装着し、下の歯では矯正器具を表側に装着する矯正方法です。
下の歯は唇で隠すことができるため、表側矯正よりも矯正器具を目立ちづらくできます。
フルリンガル矯正(下顎全体に装置をつける矯正治療)よりも値段が安くなるため、多少であれば矯正器具が見えても気にならないという方におすすめです。
ハーフリンガル矯正のメリットを以下にまとめました。
メリット
- 表側矯正より目立ちにくい
- かかる費用を抑えられる
- 口の中の痛みや違和感が少ない
表側矯正・裏側矯正などのワイヤー矯正が必要な症例で、表側矯正よりも目立ちにくい治療法を希望する方は、ハーフリンガル矯正を選択肢に加えることをおすすめします。
高額な費用がかかる裏側矯正と比べて、治療費をやや抑えられます。
一方、ハーフリンガル矯正の主なデメリットは以下のとおりです。
デメリット
- 歯の見え方によっては不向き
- 歯が磨きにくい
- 装着直後は痛みや違和感があるかも
- 噛み合わせの状態によっては装置がつけられない
ワイヤーの種類による違い
ワイヤー矯正では、ワイヤーを使い分けることで歯にかかる圧力を調整します。
定期的に通院して歯の状態を確認し、ワイヤーを変えながら歯並びを調整していきます。
適用される治療の段階とワイヤーの種類は以下のとおりです。
矯正治療の段階 | 使用ワイヤーの材料成分 | 特徴 |
初期: 歯をアーチ状に一列に揃える |
ニッケルチタンワイヤー | 治療初期から歯に強い力を加えると、副作用や強い疼痛が発生するため、できるだけ弱い力しか発生しないワイヤーを使用。 形状記憶という特性を持っているため、矯正歯科医が正確な位置にブラケット装置を設置することができれば、簡単に歯が一列に揃います。 温度変態特性(サーモ機能)もあり、口の中の温度である37度付近で超弾性の能力が変化し、形状記憶された形に戻る力が強くなるように設定されているものもあります。 |
中期: 抜歯空隙の閉鎖など大きな歯の移動 |
ステンレススチールワイヤー | 治療の中盤は耐久性のある1本のワイヤーを少しずつ調整しながら長く使用します。 特に抜歯症例の場合は、空隙閉鎖を行う際にワイヤーが大きくたわまないようにある程度の硬さが必要。 強く引っ張ってもたわみづらいステンレス鋼のワイヤーが利用されます。 ブラケット装置に通す前に、歯並びの横幅や前歯の傾きを改善するため、アーチワイヤーのカーブ量を調整します。 |
後期: 細かい歯の位置の調整と噛み合わせの安定 |
βチタンワイヤー (チタンにニッケル以外の金属を混ぜた合金) |
矯正治療の終盤は正しい位置に歯を固定し、細かい歯の位置の調整を行います。
ある程度の硬さと弾性が必要になってきます。 ここではβチタンワイヤーという、チタンにニッケル以外の金属を混ぜた合金を使用。 中間的な硬さや弾性を持ち適度な強さがあり、屈曲も可能な汎用性の高いワイヤー。 ニッケルを含まないため、金属アレルギーの方にも使用できます。 |
ワイヤー矯正に用いられるワイヤーには、断面や太さにも数種類あり、それぞれ特徴があります。
断面が丸い ワイヤー | 歯に適切な矯正力をかけられるワイヤー。 断面が丸いのである程度の摩擦が生まれ、弱い力で歯を動かす症例に向いています。 |
---|---|
断面が四角いワイヤー | しっかり歯に密着するため摩擦が少ないことが特徴です。固定力が高いため、強い力で歯を動かす症例に向いています。 歯の角度調整にも適しているので、仕上げの段階で使用されることもあります。 |
太いワイヤー | 歯に対して強い矯正力を加えられます。 矯正治療を行ってある程度歯並びが整ったときに、最後の仕上げとして歯並びを固定させるために使用することが多いです。 |
細いワイヤー | 歯に対して弱い矯正力を加えられます。矯正治療を開始したばかりの時期など、乱れた歯並びを少しずつ動かして整えるときに役立ちます。 |
ホワイト ワイヤー | 白色に加工されたワイヤーです。目立たないことがメリットです。 白いコーティングが剥がれて銀色のワイヤーが見える可能性があります。 |
目立ちにくい透明な矯正器具
歯の表面につける装置とワイヤーの両方を透明にすることもできます。
かなり目立ちにくくなりますが、一般的な金属のワイヤーに比べて、透明のワイヤーは破折しやすい傾向があります。
メタル・チタンなどの金属製矯正器具
一般的なステンレス製以外にも、チタンや形状記憶合金を使用した器具があります。
生体親和性の高いチタンを使った矯正装置なら、金属アレルギーの方でも使用可能です。
華やかな見た目のカラフルな矯正器具
矯正装置(ブラケット)とワイヤーを留めるモジュールは、通常は透明や白の目立たないもので留めています。
これをカラフルなゴムに変えることも可能です。
季節やファッションに合わせてカラーを変えられるので、矯正器具をあえておしゃれに取り入れてみるのもおすすめです。
全体矯正と部分矯正の違い
歯科矯正には歯全体を矯正する全体矯正と歯の一部を矯正する部分矯正があります。
ここからは全体矯正と部分矯正の違いについて解説します。
全体矯正のメリット・デメリット
全体矯正のメリット・デメリットは以下のとおりです。
全体矯正 | |
メリット |
|
デメリット |
|
全体矯正は以下のような人に向いています。
- 見た目も含め、噛み合わせまでしっかり治したい人
- 歯並びの乱れが見た目だけでなく体調にも影響を及ぼしている人
- 歯科矯正にかけられる費用・期間にある程度余裕がある人
部分矯正のメリット・デメリット
部分矯正のメリットは以下のとおりです。
全体矯正 | |
メリット |
|
デメリット |
|
部分矯正が向いているのは、次のような人です。
- 気になる部分だけでも治したい人
- 過去の矯正後、少しだけ後戻りしてしまった人
- 矯正の期間・費用を抑えたい人
子どもの歯並びは小児矯正治療
矯正治療には、大きく分けて成人治療と小児治療の2種類があり、それぞれ治療の方針や目的が異なります。
大人が受ける成人矯正と、子どもが受ける小児矯正についてそれぞれ解説します。
成人矯正
成人矯正は、現状の骨格にあわせて歯を動かす矯正治療です。
成人の場合、歯並びの土台となる顎の形状が決まっているため、顎の形に合わせるように歯並びを改善します。
どうしても歯を動かすのが難しい場合には、抜歯をしなければならないケースもあります。
小児矯正
小児矯正は、将来的な骨格を予測しながら顎を動かす矯正治療です。
子どものうちは顎の骨が成長段階であるため、歯並びの土台となる顎の形状自体を変えるような治療が可能です。
小児矯正では成長とともに歯並びを整えられるため、永久歯を抜かずに歯を動かせるというメリットがあります。
歯並びや噛み癖は、子どもの発育に悪影響を及ぼすリスクもあるため、小児矯正によって顎や顔の成長バランスを整えることは非常に重要です。
矯正歯科を選ぶときのポイント
矯正の種類にはそれぞれ得意な歯並びがあったり、見た目に違いがあったりします。
自分に合った矯正の種類は各種検査や歯科医師の診断がないとわかりません。
「目立たないマウスピース型矯正がしたい」と希望しても、検査した結果マウスピース型矯正不適合になることも珍しくありません。
歯科矯正の種類や特徴を知り、自分にあった治療を受けられる矯正歯科を選びましょう。
固定式か着脱式かどうか
固定式は清掃などの自己管理は不要ですが、食事やブラッシングがしづらく、虫歯や歯周病のリスクが高くなります。
一方の着脱式は食事やブラッシングはしやすいですが、自己管理に手間がかかり、装着時間が不足していると計画通りに矯正が進まない可能性があります。
対応できる歯並びの状態
最も適応範囲が広い矯正は表側矯正です。抜歯が必要になるほど重度の歯並びの乱れにも対応可能です。
一方、裏側矯正・ハーフリンガル矯正は表側矯正と比較すると適応範囲は絞られます。
治療にかかる期間
各歯科矯正は矯正範囲によってかかる期間が異なります。
各矯正方法にかかる期間の相場は以下のとおりです。
矯正の種類 | 全体矯正 | 部分矯正 | 通院頻度 | |
---|---|---|---|---|
ワイヤー | 表側矯正 | 1〜3年程度 | 2ヶ月〜1年程度 | 1ヶ月に1回 |
裏側矯正 | 2〜3年程度 | 5ヶ月〜1年程度 | 1ヶ月に1回 | |
ハーフリンガル矯正 | 2〜3年程度 | 5ヶ月〜1年程度 | 1ヶ月に1回 | |
マウスピース型矯正 | 1〜3年程度 | 2ヶ月〜1年程度 | 1〜3ヶ月に1回 |
歯科矯正には保定期間も必要です。保定期間とは動かした歯をその場で固定し、後戻りを防ぐための期間です。
少なくとも矯正期間と同じくらいの期間は保定にあてなければなりません。
=歯科矯正期間(2〜6年)
このように計算できるため、矯正治療を検討している場合は、最低でも2年の期間を見積もるようにしましょう。
抜歯が必要かどうか
ワイヤー矯正と裏側矯正の場合は、抜歯を伴うケースが多くあります。
一方、マウスピース矯正では基本的に抜歯はしません。
親知らずの影響を受ける場合など、治療上必要と判断された場合や希望する場合にのみ、抜歯を行います。
まとめ
歯科矯正には使用する矯正装具の種類があり、それぞれにメリットやデメリットがあります。
どの治療法が自分に向いているかはご自身での判断だけでなく、歯科医師の診断が必要です。
希望の治療法を提供している矯正歯科医院で、相談してみましょう。
京急・旗の台駅の「旗の台駅前KT歯科・矯正歯科クリニック」では、幅広い歯のお悩みを解決すべく、各分野に強い担当ドクターがチームとなり、患者様ひとりひとりの状況に合わせた治療を提案させていただきます。
生涯にわたり健康な歯を保つためのケアや治療法を提供しています。
はじめて来院されるときも、最後まで治療をやり遂げる通院のためにも、駅から徒歩0分という立地はとても便利です。
歯のお悩みには、京急・旗の台駅の「旗の台駅前KT歯科・矯正歯科クリニック」へ些細なこともどうぞお気軽にご相談ください。
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また、治療は天然歯にこだわり、できるかぎり患者様ご自身の歯を残すために治療努力をします。
サイト監修者について
旗の台駅前KT歯科・矯正歯科クリニック
院長 中島 優
東京歯科大学を卒業後、大阪府内の複数の歯科クリニックにて歯周病治療を基盤とした総合歯科治療に取り組んできました。
2024年8月から旗の台駅前KT歯科・矯正歯科クリニックにて院長に就任し、一般歯科だけではなく、矯正歯科治療やインプランドなどの高度な技術を要する幅広い治療にも対応しております。通いやすい歯科医院であり、話しやすい歯科医師であることを心掛けております。
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